Story
蒼海のなりたち
銀座の路地裏、カウンター八席の江戸前鮨。豊洲で選び抜いた旬の魚と、三種の赤酢を合わせたシャリ。握った刹那を、そのまま手のひらへ。
二〇〇九
日本橋、下足番から
十八で老舗の暖簾をくぐり、最初の二年は下足と洗い場。魚に触れる前に、店の呼吸を覚えろと言われました。いま思えば、あの二年がいちばん長く効いています。
二〇一九
京都で、椀を学び直す
握りは十分に握れるつもりでいた頃、出汁が引けていないことに気づきました。割烹で二年、椀のためだけに通った日々が、いまのつまみの骨格になっています。
二〇二三
銀座六丁目、地下一階
物件を決めた理由は、檜の一枚板が入る幅がぎりぎりあったこと。席を八つに削ったのは、握った鮨が冷めない距離が、そこまでだったからです。
Shokunin
大将 蒼井 誠一
日本橋の老舗で十二年、修業ののち独立。京都の割烹で二年、椀と出汁を学び直した経験が、いまの品書きの骨格になっています。
「鮨は、魚と米と酢と、あとは間合いだけ」。技を見せるための握りはしません。目の前の一人が、次の一貫を待ち遠しく思うこと。それだけを頼りに立っています。